大学生の時に知り合った友人がいた。
彼と知り合ったきっかけはバイトで、聞けば小生の近所で、何と通っている大学も同じだということが判明した。
仲良くなるのに時間はかからず、気づけばよく煙草を吸い、飲み歩いていた。
とはいえ本当に心から信頼していたわけではない。
彼は良い人柄だったが、とにかくだらしがなく、不真面目だった。
時間は守れず
金持ちは悪く
そのくせ、理想像とか夢とかは、ご立派なものを持っていた。
「人が信じれなくなった・・・」と弱音を吐いていたことがあった。
聞けば友人3~4人と旅行の計画を立てたはいいが、自分が行けるかどうかはっきりせず
連絡を怠り、気づけば自分以外の面子で旅行が決行され、それに失望したのだという。
馬鹿だと思った。
就職活動をしていた頃は、頻繁に会っていた。
多くの就活生が説明会の椅子の取り合い、自己分析、業界研究を経て
何となくビジョンを持って企業へ採用試験に向かう時期に
彼はノソノソと昼頃に起きて、大手企業の採用ページをチェックしていたらしい。
何故競争率の高い理想を抱いておきながら
そこまで呑気でいられるのだろうと不思議に思っていた。
そして春が終わって
背丈の合った活動をしていた甲斐(?)かGW前に内定を貰い、とりあえず安心した小生と
面白くなさそうに企業を回る彼がいた。
人気の企業はもう募集を終えている。
彼が志望したキャリアもその中の一つだ。
その年度の就職で100%の要望が叶うことはない時期に差し掛かっていた。
少なくても彼の要望は。
金の尽きた彼に誘われ、夜の公園で珈琲を飲むことが多くなった。
「今日も駄目だった」
挨拶代りの一言は大体これだった。
「明日あたりに何とかなるさ」
台詞と化した言葉を返すしかなかった。
大学生活を
勉学に打ち込むわけでもなく
サークルや部活に没頭したわけでもなく
バイトで社会経験を人一倍積んだわけでもなく
唯一趣味といえる自転車も別に乗り回していない。
そう、小生から見た彼は別に対企業において有利なファクターを持っていなかった。
大学で授業もそこそこにベースばっかり弾いていた小生でさえもそのように映っていたのだ。
「おすすめの企業ない?」と訊かれ以前自分が会社を回っていた時に良いなと思えた企業を教えると
「いやぁ大手がいいわ」
そして夏が訪れかけている時期にようやく内定を取得した。
ググればまず【ブラック企業】という悪評高い大手に。
彼も重々承知のことらしく
「ここからがスタートだ!資格を取ってスキルを磨いてステップアップだ!」と意気込んだ。
冬になり、クリスマスも近い時期
初級レベルの資格試験の受験を「時期を見合わせる」と言ってキャンセルする彼が在った。
「そうだね、焦ることもないね」と言葉をかけた小生は
「こいつは一生こんなことを言い続けるのだろうな・・・」と思った。
そして大学を卒業し、小生は一人暮らしを始めて実家を離れた。
卒業後、彼とは一切の連絡を取っていない。
というより返信は来ない(貸したCDを返してくれという内容を軽く5回は無視された)
ある時の休み、実家に帰ってきてお茶を飲む小生は母からこんなことを聞かされた。
「よく遊んでた●●君いるじゃない?ほら同じバイト先だった子。こないだ朝見かけたけど、廃人みたいな顔でジャージ来て歩いてたわよ。」
それから彼は今、どうしてるのだろうか。
知る由もない。
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