一人の人生が一つの絵画だと考えたら
生まれてきた時、その人はきっと真っ白いキャンバスそのもので
歩み始めた時にきっとパレットと筆が握られている。
全てはその人次第で。
でも何を描けばいいか分からない。
そもそも何から始めればいいかも皆目検討つかない。
親から愛情を貰って、色を知って
友達、恩師、恋人と過ごした時間の中で、何かを知り、経験し、模様を覚える。
色んなシーンに立って、筆の使い方が上手くなってくる。
だんだん描きたい絵が分かってくる。
塗ろうと思った色が作れなかったこともあるかもしれない。
例えば志望校に落ちたとき、あの子にフラれたとき。
そもそも綺麗な色を知らずに筆を動かしていたかもしれない。
虐待だったり、いじめだったり、戦争だったり。
誰かにキャンバスを描き殴られたこともあるだろう。
あのロックギタリストのクールな音で、心ない人からの中傷で。
筆を後ろに投げて、もう何も描きたくないと嘆いたことも少なくない。
夢を諦めた時、心が病気になった時。
気づいたら真っ白かったキャンバスは汚れてて
むしろ白いスペースなんて見当たらなくて
何て雑な絵!こんな色合い!本当は違うものが描きたかった!
まっすぐに線を引いたつもりだけど、ちょっと曲線気味
鮮やかな色にしたかった、でも作った色はイメージよりダークトーン
でもよく見たら意外と悪くない。
愛着ある絵になってる。
当初のイメージと違うけど何だかんだこの模様は気に入ってる
描き直し、塗り直し、考え直しを繰り返した絵画。
雑念、雑然、雑学、混雑、複雑の
「芸術」と「作品」の決定的な違い
それに対して「雑味」が含まれているかどうかだと誰かが言っていた。
何かの本でも書いていたかも。
一人の人生が一つの絵画だと考えたら
それはとんでもなく芸術なんだな。